2024年1月1日相手の考えや気持ちを汲み取って話をしよう
★ある上司と部下のやり取り
先日、オフィスで仕事をしていると、近くの席にいた他の部署の上司と部下のやり取りが聞こえてきました。
上司「なぜお客様に約束した期日通りに資料を提出できなかったんだ?」
部下「私が問い合わせたことへの他部署からの回答が遅かったんです。それにその回答内容も今一つ明確ではなく、再度確認しないといけなかったのです」
私はこのやり取りを聞いて、(ああ、この部下の話し方はちょっと勿体ないなぁ)と思ってしまいました。
というのは、この上司は、部下が言ったような返答を望んでいないように感じたからです。
★相手の気持ちを考える
一般的に、質問されたり要求されたりすると、私たちはその質問や要求にそのまま答えようとします。
このやり取りの部下も、提出が遅れた理由を聞かれたので、素直にその理由を述べています。
しかし、私には、この上司は今後、約束した期限は必ず守るようにして欲しい、と思って話しているように感じました。
必ずしも提出が遅れた理由を聞きたいわけではないと思ったのです。
上司は、その思いを質問という形で表したのではないか。
そうだとすると、上のような質問を部下が表面的にとらえて遅れた理由を説明してしまうと、上司には「言い訳」に聞こえてしまいます。
「申し訳ありません。私の段取りに甘さがありました。今後、事前の準備や途中の作業の期限設定をきちんとします」
部下がこのような回答をすれば、上司は(自分の気持ちがわかっているな)と思ってくれたことでしょう。
★研修講師のこだわり
このように、相手の言葉通りに捉えるのではなく、その気持ちなどを汲むことが大切な場面は、私たちの日常で頻繁にあります。
少し前のことですが、同じ職場のFさんと立ち話をしていたところ、こんな相談を受けました。
「今、外部の講師が主催する、3日間のマネジメント研修を受けているんです。研修自体は面白くてためになるんですが、講師がその日の研修の終わりに必ず『では、本日の講義について質問をしてください』と言うんです。
誰も質問しないと、講師は『質問がないということはあり得ないですよ。質問してください』と厳しいんです。
今勉強したことを理解するのに精一杯で、質問なんかなかなか思い浮かばないんですよね。どうしたらいいと思いますか?」
皆さんがこういう相談をされたら、どう答えるでしょうか。
私は、Fさんに「確認ならできるんじゃない?」と答えました。
★講師はなぜ質問にこだわったのか
Fさんは講師の『質問』という言葉をとらえて(わからないことを聞かなければ・・・)と考えたのだと思います。
Fさんが言うように、今聞いた話を咀嚼して理解することで精一杯の状態では、いくら考えても「何がわからないのかがわからない」という状態でしょうから、質問することに戸惑いを感じたのは無理のない話です。
しかし、この講師はなぜ『質問』にこだわったのでしょうか。
この講師の意図を考えてみると、少し違う見方や考え方ができるのではないでしょうか。
私はこの講師の狙いは、「質問に答えることで、講義とは違う切り口やアプローチで説明することができる。それを話すことで、参加者の理解をより深めることができる」ということなのではないか、と推測しました。
単に「わからないところがあればもっと詳しく説明するので質問してください」という意図ではなさそうだ、と思ったのです。
私の推測通りであれば、必ずしも「この部分がわかりません」という質問を求めているのではないはずです。
例えば、このような確認をすることでよいのではないでしょうか。
「部下には指示ではなく提案というスタイルを取る、という話がありました。それは部下の自発性を引き出すという狙いがあると思いますが、そう考えてよいのでしょうか?」
「権限と責任を明確にする、というお話を聞いて、私はまず部下の責任を明確にしてから具体的な権限を設計すべきだと考えました。手順としてはこれが一般的でしょうか?」
質問という形式ですが、内容的には確認です。
こうした類の確認であれば、今聞いた講義に関することでも質問できるでしょう。
私たちは、日常会話でもビジネスでも質問を頻繁にしたりされたりしていますが、その言葉の奥には別の考えや気持ちがある場合が少なくありません。
それを考えてみるだけで、コミュニケーションの質は大きく変わります。
ぜひ言葉の奥にある、相手の考えや気持ちを考えながら話すようにしてください。
★コミュニケーションの取り方を基本から学びませんか?
上に述べたように、相手の考えや気持ちを考えながら話すことで、より適切にコミュニケーションを取ることができるようになります。
日本話し方センターのベーシックコースでは、コミュニケーションに関する基本的な事柄を丁寧に解説し、それらを実習で実践して身につけていただいています。
その根底にある考え方は、『常に相手の立場に立って物事を考える』です。
このことを意識すれば、今回お話したこともできるようになります。
事実、70年の歴史の中で、多くの人がこれらのスキルを身につけられています。
ぜひあなたもご受講ください!